2012年12月12日水曜日

7月14日(土)童心にかえってパン作り




・・・・・・・・【パンを焼いた電気竈】

さて、基本的な材料(小麦粉・サワークリーム・塩・イースト・水)さえあれば、パンはできる。ライ麦粉には種類が多く、「袋に書かれている数字(480、700、1400など)が高いほど栄養価があります」という解説から、実技開始だ。

トウモロコシ・粟・そば、胡麻・麻の実・ヒマワリの種・カボチャの種や胡桃・葡萄などが次々に台に並ぶ。基本材料に、これらを単独で、あるいは、いろいろ混ぜたり、飾りにしたりして、「どんなパンになるか、楽しめますよ」と、促す。

以前は、材料を捏ねるのは唯一の男性の仕事で、1時間の力仕事だったとか。会社や工場で働く家庭が増え、自家製パンが敬遠されるのも当然だろう。

現在の生地の作り方は、粉にイーストを入れ、サワークリームや水を入れて手で混ぜ、生地がなめらかになるまでこねた後、よく膨らむように1〜2時間休ませる。
それから形を整えて(成形)、200度Cの電気竈で焼く。1kgの材料だと、約30分で大きいパンが焼きあがる。

この成形部分が面白かった。細長いのや、丸いのや、小さいのや、大きいのや・・・。参加者は好みの形を工夫したり、飾りをしたり。紐のようにのばした生地を組み合わせて、芸術的?なものもある。まるで粘土細工をするような感覚で、ワイワイ、ガヤガヤと賑やかだった。



・・・【焼きあがったパンを並べて記念撮影】

焼き上がったパンが並べられたときの歓声。童心にかえったひとときだった。
「パンは焼き立てよりも、水分が抜けて冷めてからが美味しいのです。みなさんはこのパンを全部持って帰って、召し上がってください」。

袋いっぱいのパンをお土産に満足し、1時頃ホテルに帰着。
昼食は、もちろん、お手製のパンに、チーズ、ハム、トマト、レタスを挟んでサンドイッチにした。こんなとき、歩いて1分のスーパーマーケットが冷蔵庫代わりになって、とても便利なのが有難い。

余談だけれど、このパン作り体験には夫婦で参加が多かったが、手作業苦手の夫は「パン作りねえ・・・」と尻込みし、インスブルックの州立博物館へ。(これについては、夫が現地からのツイッターに書いた)。

午後は休息を兼ねて、PCなどをしながら、寛ぐ。

6時半に夕食へ。今夜もホテルのレストランで揃うことになっている。
ところが、第2陣の名古屋グループの姿はなく、開始時刻なので食べ始めた。
半ば過ぎになって、草臥れて憮然とした表情で現れた面々が、ボソボソと呟き、トラブルがあったことがわかった。

彼らは、今日は南の国境を越えて、イタリアのブレッサノーネへ出かけたが、帰りの集合時刻に来ない人がいたので、予定の次の列車に乗って、やっと夕食に間に合ったのだ。次の列車の時刻になっても行方不明者は現れなかったので、添乗員が残ったという。

「その人は、その前の集合時間にも遅れて2度目なのよ。迷惑だった・・・」と、恨めしげな口振りだった。ツアーに参加して時間を守らない人がいると、必要以上に心身の疲れを感じてしまう。「まだまだ先があるのだから・・・」と、自戒した。

7月14日(土) パン工房「ルエッツ」へ




【パン焼きを教えてくれたマネージャーのカール・エラーさん】

熟睡して6時頃目覚め、「こーれは寝過ぎた、しくじった・・・」と、大急ぎで身支度。時間に急かされるのが苦手だから、早起きするはずだったのに。
夫はすでにシャワーを浴び、「いつまで寝ているのかと、待っていたよ」と言うので、「起こしてくれればいいのに・・・」とブツブツ。
6時半に朝食へ行く。

8時15分、中央駅集合。
午前中3時間ほど、日本人向けの地元旅行社(JTC)モラスさん企画のプログラムに参加して、インスブルック郊外のケマーテン村にあるパン工房「ルエッツ」で、パン作りを体験した。

ケマーテン駅から数分。家々の庭に小さなリンゴや杏、ナシなどがたわわに実っているのを眺めながら歩く。遠くにある山並みの前面に平野が続き、パン工房前に広がる麦畑では、青々と穂を伸ばしている。後で「パン作りの材料にするために栽培しています・・・」と、聞いた。

「ルエッツ」では、安全な食を考える11人の若者が、パンの普及を目的に活動している。気軽にできる日常的なパン作りを教え、付設の売店やレストランでは、焼きたてのパンを提供している。
最近のオーストリアでは、生活スタイルの変化に伴って家庭でパンを焼く風習がめっきり減り、特に都市では、ほとんどの家庭はパンを購入している。ルエッツにわざわざ立ち寄って行く車が多く、賑わっている様子を見ると、こうした日常がわかる。

マネージャーのカール・エラーさんが、基礎コースのデモンストレーションをしながら、丁寧にパン作りを説明。ドイツ語から日本語への通訳はモラスさん。

パンにまつわる話が面白い。
例えば、毎年11月2日と3日は、「パンを与えるお祭り」で、幼児や老人などにパンを配るそうな。
10月20日から12月1日の間には、この1年に残った材料(ライ麦)でパンを焼き、家畜にも与える。このパンはいちばんエネルギーがあり、冬を控えた家畜の栄養補給になるという。新しいライ麦を収穫し、古い材料を無駄にしない意味もあるのだろう。
また、イースター(復活祭)には、ウサギの形をしたパンを焼いて、子どもに与える・・・。

「こうしたパンを焼く行為は、人々の暮らしが、火・水・風・土・・・など、たくさんの恵みを受けて営まれていることに感謝して、自然に返す儀式なのです」。

美味しいパン作りに取り組んでいる思想だろうかと思いながら、日本の「おくどさん(竈さん)」信仰と同じだなと感じた。