2014年12月3日水曜日

[NYへの旅] 26. ハイライン・ウオーキング

3月27日(水) その4
ニューヨーク観光の最後はハイライン・ウオーキング。
今度の旅で会った友人の多くが、目を輝かせながら、異口同音に話した。
「ハイライン・ウオーキングは絶対にお勧めよ。十分に楽しめるから、ニューヨークに来たら出かけなくっちゃ・・・」と。アメリカ人の底抜けのホスピタリティを感じながら、「こんなにまでニューヨークっ子を虜にする魅力の場所には、出かけなければなるまい・・・」と、旅の最後に予定に入れた。

地上9メートルの高さだから「ハイライン」、そこを歩くので「ハイライン・ウオーキング」と呼んで、新しい観光名所になっている。

およそ80年前(人間なら傘寿!)の1934年に、ハドソン川に沿って、貨物専用の高架鉄道が開通した。川と陸を結ぶ物流を担って重要な路線だったが、車の普及で物資輸送の役割が終わり、廃止された。
アメリカの発展を担った地域を走り、ニューヨークの歴史を体現した鉄道だったから、消滅を惜しんだ有志が、高架鉄道の保存を呼びかけた。
こうして、2009年に、12丁目から30丁目の間に、人が利用するハイライン(観光ガイドブックには、”空中庭園”と書いているものもある)が出現した。

歩き始めてから間もなく、知恵を出しあって様々なアイディアを出し、考え抜かれてつくられた遊歩道に感心した。「素晴らしい!」と、何度も呟きながら・・・。
セントラル・パークの緑や空間とは、規模からして比較できないけれど、都会の自然がもたらすゆとりやあたたかさは同じだと感じた。

列車のための地上9メートルの高架をそのまま利用した道は、標準的なビルの3階の高さになる。街路を歩くのとは異なって、視界が拡がって面白い。ところどころ、目の前に立ちはだかるビルが途切れ、碁盤の目のように区画された南北の通りが、ずーっと見渡せる。期せずして、ニューヨークの市街が俯瞰できて、うれしくなる。
かと思えば、柵から身を乗り出して真下を見ると、かなり大きな木造の廃屋がある。貨物鉄道の衰退とともに、時代の進展についていけず、打ち捨てられていった暮らしがあったのだろう。

軌道を保護するための植樹が、遊歩道の趣を演出している。場所によって異なった樹木が植えられ、樹高もさまざまだから、限られた軌道跡の変化は豊かだ。

ハドソン川を見下ろす地点に佇むと、河畔のベンチに、肩を抱き合うアベックが座っている。タイミングよく、観光客を乗せたフェリーが通り過ぎていく。

おや、おや。ちょっと広い場所で、地面に寝そべって昼寝をしている若者たち。
枕にしている荷物から推測すると、バックパッカーらしい。
その近くでは、日向ぼっこをしながらアイスクリームを舐めている少女グループ。

ヴァイオリンを弾く女性とアコーディオンを奏でる男性は知り合い同士か。聴衆の反応を確かめながら、サービス精神たっぷりで、ご本人たちも楽しんでいる風情だ。

ジャグリングの技を披露し、子供たちの歓声を浴びているピエロ姿の若い男性。

芝生の上に売り物らしい絵画を置いた傍らで、読書をしている人たち。

快晴だった空にときおり雲が拡がって寒くなった。タンクトップ姿でジョギングをしながら駆け抜けて行く男女の二人連れ。

ハイラインができる前は列車が走っていたから、沿線の建物を覗く者は、ほとんどいなかったに違いない。今は、すぐ前に窓が並んでいるから、覗かれたり、覗いたり。
「どうぞご覧ください」とばかり、窓を開け放して、部屋の内部の装飾を見せている家。どんな人がいるのかと立ち止まって覗くと、笑顔の老人が座っている。「退屈を紛らせるこんな遊び!をしている」と思いながら、手を振り返す。
しばらく歩くと、人が窓にぶら下がっている。「危ない!」とドキリとしたが、巧妙に作られた人間と同じ大きさの人形だった。驚かせるのを面白がっている感じだ。また、「Welcome」のプレートを掲げた人形が、窓枠に座っている。手をのばせば、窓に届くような距離だが、まさか、ここから訪問する者はいる? いない? 
 
カーテンをしっかりおろし、閉鎖している家。住人には、有難迷惑のハイラインなのだろうか。

考え抜かれたアイディアでいろいろな表情を見せる遊歩道は、古い歴史を活かし、それを利用する人間を大事にしている。ニューヨークが生み出した斬新な施設としての印象が新鮮だったし、楽しめたし、得難い経験だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿